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バイト先に着くと、加野せんぱいはいつものように控え室の机に顔を押し当てて眠っていた。

いつもよりも少しだけ穏やかに見える寝顔は、二つ上なのを忘れてしまうくらいに幼い。


荷物を整理して、目の前に座ると、せんぱいの眉毛が少しだけ動いた。だけどそれはすぐに大人しくなって、そのままスヤスヤとまた寝息を立てる。


「…加野せんぱい、」


重力に従って下に流れているふわふわの髪。それを撫でたくなるのを必死に抑えながら、鞄から栄養ドリンクを取り出した。


「…加野せんぱい」

「…」


何度も、名前を呼ぶ。

夢を見ているであろう、せんぱいに語りかける。


「…ねぇ、せんぱい。今、どんな夢見てる…?」


いつも、思うんだ。

夢の中でいいから、せんぱいの気持ちの中に入っていけたら、どんなにしあわせだろうって。

普段は一緒にいられる時間は限られているから、せめてわたしの夢と繋がって、その中で出会いたいと思う。

でも、そんな考えが馬鹿げてるってのも、ちゃんと分かってるよ。