「ほう。だからつまり、凰香はその人が加野さんの彼女なんじゃないかって思ってモヤモヤしていると?」


ずっと抱えておくのも嫌だから、結にこの間のことを話した。あれから加野せんぱいが電話に出ることはもうなかったけれど、どうしても “ きみかさん ” の存在は気になってしまう。

…だって、あんなにやさしい声で話してたんだもん。何かあるって思っちゃうよ。


「でもまぁ加野さんって、飛び抜けてイケメンってわけじゃないけど、なんていうかオーラがあるじゃん? だから女の人には絶対にモテるよねぇ」

「…うん、絶対モテてると思う」

「それでそんなにやさしいんでしょう?女の人が放っておくわけないもん。彼女のひとりやふたりいても、おかしくないかあ」

「ウッ」


結の放った言葉が胸に刺さる。別に、間違ったことは言っていない。言っていないけど…。もっとお手柔らかに頼みたいよ。


「…やっぱり、彼女だと思う?」

「それは分からなくない?やっぱり加野さんに直接聞いてみるのが一番だよ凰香!」

「ええ〜〜…」


聞けていたらこんなに悩まないよ。って言いたいけれど、さすがに正論過ぎて何も言えない。
加野せんぱいに聞けば一発で分かる。すぐに返事は返ってくるはず。

それはわかってる。

…でも、やっぱりこわいのは変わらないよ。