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せんぱいの口から、“ きみかさん ” という女の人の名前が出てきてから、ため息の数が多くなってしまったと思う。
「はぁ〜〜…」
「えっ。長いため息。どうしたの?」
自習室で雪崩れ込むわたしを、心配そうに覗き込む友だちの結(ゆい)。
大学に入ってから、一番最初に話した子だ。
「んん…、何でもない」
「何でもなくないでしょう。もしかして、加野さんのこと?」
「ウッ」
学校に行くまでに買ってきたのであろう、お洒落なカフェのコーヒーを飲みながら、結はずばりとわたしの心境を当てる。さすがだ。
「なになに。なんか悩んでんの?」
「悩んでることばっかだよ〜。ていうか、何ちょっとニヤニヤしてんの?もう」
「えっ、してないよ〜。今度はどんなことでモヤモヤしてんのかなって、親友として心配してるんじゃん」
「うわ、絶対ウソ」
美人で可愛い結は、こういう恋の話が好き。わたしが加野せんぱいの話を出すと、前のめりで食いついてくる。
結は春に出会った時から彼氏がいて、その人は同じ教育学部の4年生の先輩。まだ話したことはないけど、顔は分かる。
そして、その人も今は、どうやらわたしと加野せんぱいと同じバイト先で、塾の講師をしているらしい。
なんだかよく分からない繋がり。だから、結はまたさらに面白がっている。