「なんで?凰香ちゃんと話してたんだから、謝らなくていーよ」

「…」


再び、降ってくる大きな手のひら。

ぽんぽんと、2回優しくバウンドさせられて、彼はまたやさしい笑顔をわたしに向けた。



…加野せんぱい。

せんぱいは、好きな人はいますか。

さっきの、“ きみかさん ” は、彼女さんの名前ですか。

この後も、さっきの人と電話をするんですか。

わたしと話す時みたいに、やさしい声を向けるのですか。


……それとも。

わたしの知らない顔を、その人には見せていたりするのですか。



「…ほら、早く家に入りな。また次のバイトで、よろしくな」

「はい…」



わたしは、加野せんぱいがすき。

せんぱいの、やさしいところが大好き。

少しだけ、掴めないところも。

なかなか、心を開いてくれないところも。



…ねぇ、加野せんぱい。

わたしは、加野せんぱいのことが、まだまだたくさん、知りたいんです。