午後3時、きみと夢のなか


・・・


道を歩くとき、加野せんぱいは必ず車道側を歩く。そして、わたしの少し前を歩きながら、歩く速さもわたしに合わせる。

こういうひとうひとつの優しさが、加野せんぱいらしくて好き。


「あぁ〜、もう9時か〜。これから夕飯食うのめんどくさいな」

「ええ、ダメですよちゃんと食べないと。疲れてるんですから、ちゃんと好きなもの食べてください」


隣で伸びをしながら、大きな欠伸を手のひらで抑える加野せんぱい。せんぱいは、いつもこんなことを言っている気がする。


「好きなものって言ってもねぇ」

「加野せんぱい、食べ物だと何が好きなんですか?」

「ん?好きなもの?里芋の煮物かなあ」

「えっ!?せんぱい、渋いですね!!」

「ははは。和食派なの、俺」


意外だ〜!

お肉!とか真っ先に言いそうなのに、まさかの里芋の煮物。たしかに美味しいけど、確かにそれは、すぐ作れるようなものではないなあ。

食べに行きますか?って言いたいけど、そんなもの、どこのお店に入っているのかなんて、分からないし。


…でも、だからってさ。

わたしが作りましょうか?なんて言うのは、さすがに恥ずかしいし恐れ多いよ。


彼女でも、ないんだし。