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バイトが終わった後も、わたしたちはその控え室に居座って、しばらく話して帰る。
家庭がある主婦のパートの人たちは、そのまま帰ってしまうから、大学生がわたしたち2人だけのこの教室で、控え室を使う人は他にいない。
「っあ〜〜。今日もなんとか終わったね」
受け持っている子どもたちの今日の様子を記していると、子どもと最後まで遊んで疲れ切った加野せんぱいが帰ってきた。
「お疲れ様です。また派手に遊んできたんですね」
「そう〜〜。なんか、学校でドロケーが流行ってんだって。だから一緒にやってきた。ドロボー役」
「はははは」
教室のすぐ隣には小さな公園がある。お迎えを待っている子どもたちは、保護者が来るまでそこで遊んで待っているから、加野せんぱいはいつもその相手をしているようだ。
自分も疲れ切ってるのに、本当にそーいうところ、優しいんだ。
「懐かしいですねぇ、ドロケー。せんぱいもやりました?」
「おー、やったやった。ドロボー役やって、牢屋に入れられた奴らを助けた瞬間が快感だったのは覚えてる」
「どんな記憶ですか」
机にでろんと身体を寝かせるせんぱい。わたしの話に耳を傾けながら、やさしく笑う。
ドロボー役をやって、タッチする隙を狙っている加野せんぱいがら少しだけ想像できる。
きっと、本気でやってたんだろうな。
長い睫毛が伏せられて、疲れた表情をした加野せんぱいは、ぐっと眉間にしわを寄せた。
わたしはその様子を見ながら、今日の子どもたちの様子を、加野せんぱいの分まで記していく。
…少しでも、負担が軽くなりますように。
そう思いながら。



