「かんぱーいっ!」


りりちゃんが満面の笑みで

グレープフルーツジュースの注がれたワイングラスを傾けた。



りりちゃんと俺の中学の卒業祝いということで、

おじさんとおばさんと一緒に窯焼きピザを食べに来たけれど、

なぜか、おじさんとおばさんはふたりで店内の離れた席に座って

ワインを飲んでいる。


ということで、
りりちゃんと俺はテラス席。


ライトアップされたテラス席で
周りをカップルに囲まれていたとしても、

俺とりりちゃんが甘い空気になるはずもなく、

りりちゃんは大口を開けてピザを平らげている。


遠く離れた席で、ワインを傾けてるりりちゃんのおじさんとおばさんを見ながらつぶやく。


「おじさんとおばさん、相変わらず仲いいね」


「うん、娘のことそっちのけでね?
私達のお祝いなのにね?

だからさ、思いっきり好きなもの頼んじゃおうよ!」


りりちゃんがいたずらな顔でメニューを手に取る。


「さすがに勝手に頼むのは…」



「大丈夫だよっ!私たちの卒業祝いだもん!」


そう言って、追加のピザを選び始めた。


「まだ食べるの?」


「もっちろん!
パスタも食べておこうかな?

でも、食後のデザートも食べたいしなぁ。

あ、玲音のピザ、一口ちょうだい?」


食欲全開のりりちゃんを見ていたら
甘い雰囲気とか、もうどうでもよくなってきた。


2枚目のピザを嬉しそうに食べているりりちゃんにニッコリと笑いかける。


「りりちゃん、俺、りりちゃんのこと、
大好きだよ」



「うん、知ってるよ」



「それも知ってる。
りりちゃんのピザ、俺にも一口ちょうだい?」


口を開けてピザを待つ。


「はいっ!あーんっ!」



りりちゃんにひとくち食べさせてもらって、
ニッコリと笑う。



いつか、りり花に想いが届くまで

何度でも伝え続けるよ。



「りりちゃん、高校を卒業するときにも、
ふたりで一緒にここに来ようね」



「うんっ!」



りり花の頬っぺたについたトマトソースを指先で拭うと、ペロリとなめる。



いつの日か、りり花のすべてを俺のものにする。



それまで、


りり花の隣は誰にも譲らないよ。




fin