私はゆっくりと自分の分の朝食を咀嚼する。
食パンが飲み込めない。食べるのが得意な方じゃないので、私の朝食は時間をかけて進む。
眠いわけじゃないし、学校がダルいとも思っていない。
ただ、毎朝のお母さんとのやりとりは少し苦痛だ。早く出かけてくれたらいいのに、口には出さないけれどいつもそう思う。
食べ終わり食器をのろのろと流しに運ぶと、またしても後ろから大声で呼ばれる。

「真香、そういえば予備校はどうするの!?」

私は振り向き、ゆっくりと答える。

「今のままでいい」
「あんたの学力に合わせるなら、もう少し上のレベルにした方がいいって言ってるじゃない。面倒臭がらず、友達にリサーチしてらっしゃい。評判のいいところ、お母さんも探してるんだから」

お母さんはカバンを手にぶつぶつ言っている。一応ダイニングから廊下に顔を出すと玄関でパンプスを引っかけるお母さんと目が合った。

「春の時点でA判定もらっていたって、油断できないのよ?みんな頑張って学力あげていくのはこれからなんだから。受験生の自覚を持ちなさい」

私は反論せずに頷き、お母さんの背がドアの向こうに消えるのを見送った。

「A判定とってあげたんだから、それでいいじゃない」

もう届かないからこそ言える本音を呟いて、私は登校の準備を始めた。