だが、青山は口を開け、ある一点の方向を見て呆然としていた。
「?青山どうした?何か見え...」
俺は青山の目線と同じ所を見ると言葉を失った。
青山が見ているのはある民家。他のボロ民家となんの変わりもない。だが、その民家のすぐ近くの木の陰にある人物が立っていた。
その人物はここにいる誰もが知っている人物、黒い髪を垂らしながら立っているその人物は鬣犬だった。
"鬣犬はこの屋敷の敷地外には出られない"というルールを根本から破られ、俺は唖然とする。
「な、なんで....なんでいるんだ?アイツは...鬣犬は屋敷外には出られないんじゃないのか?....」
俺がそう呟くと、坂目さんもようやく気付いたのか叫びに近い声を上げた。
「うわっ!!な、なんでいるんだ?ついさっきまではいなかったはずなのに!!」
「あ?何言ってんだ坂目さん。あの平地になんかいんのか?」
敦は呆れた声で聞いた。俺は鬣犬から目線を逸らし、坂目さんが指差す場所を見た。だからそこには何も無い。敦が言うように只の平地、誰もいない。
「ほら!そこに!!さっき俺達を追い回してたやつだ!!」
「な、何言ってんですか坂目さん。鬣犬はあそこの民家の近くの木の陰から....」
「何言ってんだ西条。アイツは民家のドアの中にいるぞ。コッチを向いてる。」



