恐怖の渦の中



意識はあるが、加奈は重傷だ。そんなに時間は無いことは反応で分かった。
そのまま玄関の目の前の古びた門を抜け、やっと敷地外の空間に到達した。

鬣犬の言葉が本当ならもう手出しは出来ないはずだ。


「ハァハァ....やっと外だ...」


「や、やった!助かった....」


坂目さんは余程怖かったのか、涙を流しながら手をついた。


「....?おい栄治、吉永と野宮さんと長富はどうした?」


「........三人ともアイツに...」


敦は拳を握り、怒りに震えていた。


「あのクソアマ....どこまで....どこまで殺せば気が済むんだ?」


「あいつはこの屋敷で行われていた実験体だ。人肉だけを食べさせるってな。
あいつは食料を確保してるだけ。

あいつを許せるわけがねぇけど....あいつも被害者って事なのかな?」


そう、根本的な問題になると実験をしていた組織が原因だ。そして恐らくその組織の手下が鬣犬を処理に行ったが、今は死んでるだろう。
やるだけやって後は放置、何も出来ない、そんな無責任な感じがして、悔しさがこみ上げてきた。


「さぁ!早く脱出しよう。加奈も危ない。」


俺はそう三人に呼び掛けた。坂目さんは首を縦にブンブンと振り、敦は戻って鬣犬と決着する気持ちを抑えているのか、一回頷く。