「何もされてねぇ。逆に鬣犬を地下室へ叩き落としてやった。早くここから逃げるぞ!」
そう言った瞬間、後ろの方で木の板が思いっ切り叩かれ、割れた音が聞こえた。
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!!!!許さない!!絶対に殺してやるぅぅぅぅぅぅうううう!!!」
鬣犬の怒号だ。その声量は凄まじく、思わず耳を塞いだ。床や壁、天井までもがギシギシと揺らぎ、まるでこの屋敷全体が怒っているような感じだ。
「クソッ!さぁ早く!ここからで」
食卓の方で大きい物音が聞こえた。そちらの方へ振り向くと、鬣犬が怒りの吐息を吐きながらこちらを睨んでいた。
俺と目が合うと、鬣犬は足に力を込め、俺に向かって走ってきた。
ここで俺が別の方向へ行けば二人は恐らく助かる。だが、確実じゃない。もしかしたら見境なく殺そうとしているのかもしれない。
俺は瞬時に判断し、後ろのスボンに隠していた黒い物体を取り出す。
野宮さんが使っていた拳銃だ。さっき拾っておいたのだ。
俺は本で知っただけでフワフワだが、拳銃のセーフティーが外れている事を確認し、ある場所目掛けて三発撃ち込んだ。
一発は何処か、一発は鬣犬の太もも、そしてもう一発は狙っている場所に当たった。



