俺はそんな感情を堪えながら、青山の足にギリギリ触れない程度の所の歯を両手で持つと、それを左右同時に力ずくで開けようとした。
だが、腕の力だけでは動くには動くが、それでも脱出できるほど開けることは出来なかった。
力を一瞬緩めると、歯はそれを狙っていたかのように、青山の右足に更に食い込んだ。
「グッ!ぐぁぁぁ!!」
「わ、悪い青山!もう少しだけ我慢してくれ!次こそ絶対に外してやる!」
俺は片足を歯と歯の隙間に掛け、もう一方を両手で持った。これならさっきよりは力が出るはず。
「いいか青山、三数えたら一気にやるぞ。もしもの時のために覚悟しててくれ。」
もしもの時とは、すなわちトラバサミの力に負けてしまった時のことだ。青山は少し震えながらも無言で頷く。
「よし...行くぞ!....一...二の...」
バキィン!!
三を数える直前に上で木が折れるような音がした。俺は集中すべき作業を止め、その音が聞こえる方に視線をやった。
「ッ!!西条!危ねぇえ!!!」
青山の声と俺が理解するのはほぼ同時だった。
目の前には包丁を構えながら宙を浮いている鬣犬だった。鬣犬は階段から降りることなく、俺らすぐ上の床を破壊してきたのだ。
鬣犬は不敵な笑みを浮かべながら、持っている包丁を俺にとどく範囲に達したのと同時に振り下ろすのが見えた。



