恐怖の渦の中


謙三さんは相変わらずニコニコしていた。


「私の息子であり、君のクラスメイトの"青山 潤平"が君と話がしたいそうだ。どうかね?」


尋問から解放され、両親まで呼んでくれたのに断る理由もなく、俺は静かにうなづいて謙三さんと尋問部屋から出ていった。

それにしても何故青山が俺と話をしたいのかが分からなかった。青山との絡みは良い思い出と言えることは今まで一度も無く、せいぜい物事を頼める程度の仲のはずだ。
それに謙三さんも俺に対しての扱いが良すぎる。普通なら吐くまで行われていたであろう俺の尋問を、わざわざ息子と話させたいが為に解放させた。俺は何か裏があるとしか思えなく、警戒しながら一歩一歩足を進める。

暫く歩くと署の受け付けまで来て、出口近くの長椅子に姿勢正しく、股を掛けながら片手で小説を読んでいた青山の姿が映った。優等生と言わんばかりの雰囲気を独特に出していた。


「潤平。連れてきたぞ。」


謙三さんは青山に声を掛けると、青山は小説を開いたままこちらを見てきた。そして一息付けると、小説を横に置いてあった鞄に閉まって立ち上がった。


「ありがとう父さん。さあ西条、隣座れよ。話をしよう。」


青山は優しい口調で言ってくると、俺はその言葉通りに長椅子に腰を掛けた。
それと同時に謙三さんは最後まで笑顔を絶やさず、そのまま振り返って行ってしまった。