「絃ちゃーん!」
「……っ!?」
この声、まさか。
とっさに教室にいた蓮くんの方を見てみると、みんなが廊下の方に目を取られているのをいいことに、迷惑そうな顔をしていた。
「ねぇ、あの子って1年の佐伯葵くんよね?」
「あぁ、うん……そう、みたいだねぇ?」
……や、やっぱりそうですよね。
この声はよく聞き覚えがあって、今の私を悩ませている原因。
「ねぇねぇ、ここに小鳥遊 絃ちゃんいない?」
「え、えっと、絃ちゃんなら……あ、絃ちゃん!葵くんが呼んでるよ?」
ひ、ひぃっ……!
たまたま廊下側にいた子が、葵くんに声をかけられたみたいで、私を呼ぶ。
もちろんクラス中にその声は聞こえていて、注目を浴びるのは私。
こ、怖いよ。
し、視線が……!
「ほら、行ってきなさいよ、絃。葵くんを待たせると、あとが怖いわよ?」
いやいや、今私が行っても行かなくても、質問攻めを受けるのは、想像がつくよ。



