そんなことあるはずが無い。



それくらい、バカじゃない俺はわかってる。



あれは絃で、アイツじゃない。



頭ではわかってるんだ。



でも、あまりにも似すぎていた絃に苛立ってしまった。



まだ夏本番を迎えていない今は、過ごしやすい。



梅雨が近づいているからかジメジメとはしているけれど、夜風が気持ちいい。



そんな風が、俺の怒りで湧いていた頭をゆっくり冷やしていく。



落ち着いてきてやっと、少し言いすぎたと反省した。



ぐるりと町内を1周して家へ戻る。



「おかえり、蓮兄」



「ただいま」



何事もなかったかのように、明るくいつも通り振る舞う葵。



こいつのいい所はそういうとこだ。



絶対に口に出してはやらないけど、自慢の弟だと思ってる。



そのキャラを利用してずる賢いところもあるけれど。