俺にとっても迷惑極まりないが、何もなしに突然知らされた絃ちゃんも気の毒だとは思う。



だからといって、気を許すなんてことはしないけど。



そんな思いにふける月曜日。



つい先日、同じクラスの友達と料理教室に行ったという絃ちゃんは、



"絶対、雅さんにも蓮くんにも葵くんにも、美味しいって言わせるくらい美味しい肉じゃが作るんだから!"



と何やら張り切ってキッチンに立っている。



俺はというと、そんな絃ちゃんの見張り役だ。



ほぼ毎日夕飯を作っている俺からしたら、キッチンは第二の部屋のようなもの。



そこに女が立ち入るなんて気が気じゃない。



それに、何かと絃ちゃんは心配だ。



野菜と見つめ合いながら、格闘している様子を見ていると思わず笑いがこぼれそうになる。



絶対に笑わないけど。



今まで絶対に女という女を家に上げたことがない俺が、初めて追い出さなかったのがこの子、絃ちゃん。



最初はもちろんいい気はしなかった。



それに、蓮が言い出した、絃ちゃんが家に住み込むための条件。



まず俺が惚れるわけがないし、3ヶ月なら短いようで長いけど極力避けながら過ごせばなんとかなると思っていた。



それでも、すぐ追い出すことをしなかったのは、どこかでこの子は今まで出会った女とは何かが違うと感じていたから。