少し顔を上げて見ると、視界に入ったのは会いたかった人の内の1人。


「え?耀ちん?急にいるからびっくりした~」


まさか会いたいなんて思っていたら現れてくれるとは思わなかった。

嬉しさから自然と笑みがこぼれる。

そんな俺とは対照的に耀ちんは眉を下げ、困ったような表情をしていた。


「えーっと…さっきから名前呼んでたんだけど…」

「ほんと?ごめんねぇ。考え事してたから気づかなかったや。で、どうしたの?」

「どうしたのって…」


その先は何も言わず、一度辺りを見回すと俺の手首を掴んだ。

そのままどこかへと早足で歩き出す。

暫く進むと路肩に停まっていた車に乗せられ、耀ちんは黙ったまま俺の傷の治療を始めた。

最初は周りに人がいたから気づかれないように話さずに車まで来たのかと思ったけど、今も黙っているあたりどうやらそういうわけではないらしい。

そういえば翼ちゃんと出会ってから喧嘩することは減って…耀ちんと出会った頃にはほとんど怪我もしない程度になっていた。

だから今回、こんな怪我をして耀ちん会うのは初めてだ。

もしかして黙っている理由はこれが原因?

それ以外に思い当たることもない。