「沙子、ありがとうね」
「今度は何に対するお礼?」
「分からない……でも、ありがとう」
ずっと視界が分厚い雲に覆われていたかのようだ。自分の中で勝手に閉じこもっていた殻に、沙子が穴を開けてくれた。
漏れた光のその先に、あの時の吉木がいる気がした。失いかけたものを取り戻したいと思い始めた私の手を引くように、スマホが震えた。
「初めて生で見た」という言葉とともに、グリーンフラッシュの美しい写真が、宗方君から送られてきた。