サッカー部の群れの中にいる吉木と、ばちっと目が合った。もしかして、彼もいくのだろうか。いやでも、なんとなく集団行動は嫌いそうな人だから、断ったのかな……分からない。キャンプなんかそっちのけで、まず「吉木は行くのか、行かないのか」が気になってしまった自分に少し嫌気がさした。能力を知られてから、変に意識しすぎだ、と私は首を一度強く振った。

「詩春は? 来るよね?」
丸くて大きな目を私に向けて、宗方君がニコッと笑う。うちの親は多分反対する。それと戦うことも面倒だから、私はやんわりと断ることに決めた。
「いや、私は親がうるさくてさ……泊まりは厳しいと思う」
「日帰り組もウェルカムだから、おいでよ」
「えー、詩春が来ないなら私も行けない!」
万理の言い分はよく分からなかったが、「私が行くなら行く」という責任のなすりつけ方をされたことだけは理解できた。楽しそうだし、アウトドアは好きだけど、本当に日帰りでも参加していいのだろうか。果たして親は男女混合でのキャンプに納得してくれるのだろうか。余計なことを考えすぎて言葉に詰まっていると、群れの中から低い声が響いた。

「迷ってんなら来いよ。女子のそういうとこ一々面倒くさいんだよ」
それは、私の能力を唯一知っているクラスメイトの声だった。
「お前なんでそういう言い方しかできないんだよ」
宗方君が私の代わりに怒ってくれたが、吉木の言葉に私は見事にカチンときてしまっていた。勢いに任せて、「迷ってないよ、行きたいよ」と答えると、宗方君と万里が期待した顔で私を見てきた。しまった。なんだか乗せられてしまったような気がする。けれど、二人のキラキラした顔を見たら、さすがに断れるような空気ではないことを察した。

「親に聞いてみる。大丈夫だったら、行きたい」
そう返すと、宗方君はいいね! と言って太陽みたいに笑ってくれた。そんな彼に手を振って、私と万理は購買へと向かった。能力のせいで、クラスと馴染めていなかった中学時代ではあり得なかったイベントに、多少強引ではあるが参加することになった。行くと決めたら、少しだけワクワクしている自分がいた。吉木と一緒、という点だけは引っかかるけれど。