クリーム色のカーテンから、朝の光がゆらゆらと透けている。隣の部屋から、微かにピアノの音が漏れている。柔らかな朝日が君の肌や髪の毛を白く光らせて、一瞬この景色に溶け込んで消えてしまいそうに見えた。

まだ新品のソファーは、座ると大きく跳ね返るほど張りがあり、床から天井までぴったりサイズの本棚は、何もないこの部屋で一番の存在感を放っている。
所在なさげに皮のソファに座った私を、吉木は真顔でじっと見つめて言い放った。

「借りてきた猫みたいだな」
「そりゃ落ち着かないでしょ」
「まあ、人の家って落ち着かないよな」

黒Tシャツにパンツスタイルというラフな格好の吉木は、窓を開けて空気を入れ替えた。直線的な光が私の瞳を刺し、新築独特のツンとした香りが鼻腔を擽ぐる。
日当たり抜群、と吉木は嬉しそうに呟いたが、眩しいので早く閉めて欲しい。

「引っ越しの手伝い、ありがとな。助かった」
「お礼は高級寿司でいいから、気を遣わないで」
「はは、食いもんかよ。分かった」

吉木が、暫くは日本で暮らすことになり、新しいマンションを借りた。今日は引っ越し当日で、夜通しで彼の荷解きを手伝っていたのだ。それで、この眩しすぎる朝日を浴びているという状況なのであって、徹夜でぼんやりとした頭にこの光は刺激が強過ぎる。