部屋にはもう敦政の姿はなく、少し冷たい風が部屋を通っていった。




灯りをもう一度つけて、ふくと向き合って座ると、ふくはおずおずと話を切り出した。






「……あの、輝夜様は、敦政様のことをお好きではなかったのですか?」




「えっ!?……いえ、好き…です。」



『好き』を言葉にすると、胸の中にストン、と落ちてきた。



(そうか、私、敦政のことが好きなのか……)




会ったばかりなのに恋に堕ちてしまった。これはまさに一目惚れ、というやつだろう。





(現代だったら、ぽっちゃりしていることで恋愛とかからは一歩、いや二・三歩下がっていたなぁ…)




そう、ここは現代とは違う、平安時代なのだ。





貴族が恋愛に生きた時代。






それなのに、私は……












「私、今すぐ敦政に謝りたいです。」




「い、今ですか?」





「はい。今すぐじゃないと、意味がない気がするので。」




しばらくふくと見つめ合った後、ふくは口を開いた。

「…わかりました。とりあえず、敦政様のお部屋にご案内致します。」