「また、お会いできるのを楽しみにしています」

「え、あ、わ、わたしも。わたしも、またその……サム様に、あの」

(どう言えばいいのか分からない。やっぱりイエーオリに聞いて予行練習をしないとだめだわ)

「次は、転ばないようにいらしてくださいね」

「まぁ、もう言わないでください。恥ずかしい……」

「店から見えたら、助けに行きますが」

「気を付けますね」

 サムの気遣いが嬉しいのと、見つめられて話せるのが嬉しく、シュティーナは顔が自然にほころぶのを感じる。そして、めいっぱい笑顔で返事をしている。こんなにウキウキとした気持ちはいつぶりだろう。

(美味しいものを食べた時と似ているって思ったのは、間違っていないと思うのよ)

「不思議です」

 サムはすっと真面目な顔になり、拳を顎に持っていき考える仕草でシュティーナを見つめた。青空色の目に、シュティーナは吸い込まれそうになった。実際、半分は吸い込まれていたかもしれない。

「な、なんでしょう」

 食べかすが付いているのかもしれないと、シュティーナは口元を抑えた。

「あなたの笑顔は、とてもひとを幸せな気持ちにさせますね」

 そう言ってサムは目を細めた。シュティーナは一瞬固まったあと、内容を理解して顔から火が出そうだった。

 そんなシュティーナをよそに、サムは「あっ」と広場に向かって小さく手を振る。

「お付きの方、戻られましたよ」

「シュティーナ様ぁ」

「あ、では……本当に、ありがとうございました」

 店内が忙しいのにも関わらず、つき合ってくれたサムに礼を言い、広場を通って馬車へ向かった。

(あの方、お母様と同じことを言ったわ)

 心がほこほこと温かくなるのを感じながら、揺れる馬車はいつもよりゆっくり走っているように感じた。