今朝、晴斗先輩が寝ている部屋のドアをこっそり開けた。晴斗先輩は寝ていて、わたしは少しだけ安心した。



『晴斗先輩、行ってきます。……バイバイ』



 そう言って部屋を後にした。
 本当に別れちゃいそうだから、絶対に「バイバイ」と言わないって晴斗先輩に言ったことがある。



『また明日ね』



 そういう言葉を使っていた。覚えてないかもしれないけど。


 メールを確認するのも怖くて、そのままバッグにスマホを入れた。


 別れ話だったらどうしよう。


 わかり切っていることだ。別れはきっとやってくる。


 わかっていても怖い。
 逃げだとわかっていても、今日は晴斗先輩に会いたくない。