あたしたちも慌ててそれに習った。


「ここは廃墟だが、勝手に入っていい場所じゃないんだぞ」


「ごめんなさい……」


あたしはそう言いそっと顔を上げた。


一見怖そうな顔をしているが、その声は優しそうに感じられた。


「あの、あたしたちどうしても今日この町に泊まりたいんです」


あたしは思い切ってそう切り出した。


「お前たち、昨日は宿泊施設に泊まったんだろう?」


あたしたちの存在はすでに知れ渡っているようで、男性はそう言って来た。


「そうなんですけど、今日は先約があると言われて泊まれなかったんです」


「先約?」


男性は怪訝そうな顔をし、首を傾げた。


やっぱり、先約なんて嘘だったんだろう。


「この町に来る宿泊者なんて年に何人もいないぞ。そんな嘘をつかれたなんて、お前たち何が目的でこの町へ来たんだ?」