人が通りそうだからと何気なく紗良を自分の方に引き寄せた。
手を回した腰にドキリとする。
細くて、それでいて柔らかくて。
男とは全然違う。
「私、ずっと女の子ですけど?」
怒ってる紗良が何を怒っているのか。
でも怒っている顔も可愛い。
怒った顔、照れた顔。
恥ずかしがっている顔に泣き顔、寝顔。
あぁそれに情ない顔も。
他にもたくさんの表情を見せる紗良を、ぬいぐるみみたいには売ってない紗良を、家に連れて帰れたら。
ずっと抱きしめていられたら。
「ふれあってるところを写真に撮ってあげるから、可愛い顔してよ?」
「可愛い顔なんて出来ません!」
怒った顔だって可愛いのに。
そう言ったら余計に怒るのかな?
「じゃアザラシに触れた嬉しい気持ちでいて。」
難しいこと言うなぁとぶつぶつ言う紗良が口を尖らせている。
「はい。次のお客様〜。」
アザラシに少しだけ俺も触らせてもらって、すぐに写真を撮るために前へ進んだ。
「はい。彼女さん笑顔でーす。」
アザラシに触れた紗良が「わぁ」って顔をして、それから俺に向けて微笑んだ。
その顔を何枚も何枚も写真に収めた。
「ほら。これなんかすごくいい顔。
アザラシ2匹なんて、これ見ればいつでも癒されるなぁ。」
「え?2………って私はアザラシじゃないですってば!
もう!ほら。撮りましょう?」
怒ってそれから笑った紗良が俺の手を引っ張って、ペンギンの像が置いてある写真スポットへと連れて行く。
「待って。せっかくだから2人で。」
道行く人にお願いして、携帯を渡す。
「もうちょっと寄り添って〜。
はい。チーズ。」
「ありがとうございます。」
撮れたのは寄り添ってと言われて固い顔をした紗良といつもみたいな俺。
2枚撮ってくれて、もう1枚は紗良に俺が笑いかけていて、紗良はさっきのよりリラックスした顔をしていた。
紗良には最初だけのを見せると「わー。変な顔してる!だって寄り添ってとか変なこと言うんだもん!」と騒いでいる。
2枚目は見せられない。
だって俺の気持ちが漏れて丸わかりで……。
「紗良にも癒しアザラシと今の写真を送るよ。
アドレス………。」
携帯を見せ合ってアドレス交換をしていると電話が鳴った。
画面には『清水麗華』と出ている。
嫌な予感がして、出たくないけど出なきゃいけないだろう。
「ちょっとごめんね。」
電話に出ると麗華から仕事でトラブルがあったことと、麗華もしばらくしたら出社することが告げられた。
「爽助はいいわよ。報告だけだから。
今日は外せない用事でしょ?」
離れた場所で不安そうな顔をしている紗良を見る。
俺だって………それでも……。
「俺、仕事を放っぽり出して遊んでる奴なんか王子様にはなれないと思うんだよね。」
「そう………。
女心は相変わらず分かってないけど、ま、私は助かるわ。じゃ後でね。」
電話を切ると紗良に告げるのが気が重い。
俺だってさすがに分かる。
来たばかりですぐ帰ろうなんて……。
紗良の元に行って重い口を開けた。
「仕事で……トラブルがあったみたいなんだ。」
「仕事で………そうですか。
なら、帰らないと。」
「でも………。」
「何を言ってるんですか。
毎日遅くまで頑張っているの知ってます。
休みの日まで大変ですけど、行った方がいいから電話が来たんですよね?」
すごく有難い申し出。
でも……少しは俺とまだ居たいってポーズだけでもとってよ。
俺だけ……俺だけ楽しみにしてて、俺だけ残念がってるみたいだ。
手を回した腰にドキリとする。
細くて、それでいて柔らかくて。
男とは全然違う。
「私、ずっと女の子ですけど?」
怒ってる紗良が何を怒っているのか。
でも怒っている顔も可愛い。
怒った顔、照れた顔。
恥ずかしがっている顔に泣き顔、寝顔。
あぁそれに情ない顔も。
他にもたくさんの表情を見せる紗良を、ぬいぐるみみたいには売ってない紗良を、家に連れて帰れたら。
ずっと抱きしめていられたら。
「ふれあってるところを写真に撮ってあげるから、可愛い顔してよ?」
「可愛い顔なんて出来ません!」
怒った顔だって可愛いのに。
そう言ったら余計に怒るのかな?
「じゃアザラシに触れた嬉しい気持ちでいて。」
難しいこと言うなぁとぶつぶつ言う紗良が口を尖らせている。
「はい。次のお客様〜。」
アザラシに少しだけ俺も触らせてもらって、すぐに写真を撮るために前へ進んだ。
「はい。彼女さん笑顔でーす。」
アザラシに触れた紗良が「わぁ」って顔をして、それから俺に向けて微笑んだ。
その顔を何枚も何枚も写真に収めた。
「ほら。これなんかすごくいい顔。
アザラシ2匹なんて、これ見ればいつでも癒されるなぁ。」
「え?2………って私はアザラシじゃないですってば!
もう!ほら。撮りましょう?」
怒ってそれから笑った紗良が俺の手を引っ張って、ペンギンの像が置いてある写真スポットへと連れて行く。
「待って。せっかくだから2人で。」
道行く人にお願いして、携帯を渡す。
「もうちょっと寄り添って〜。
はい。チーズ。」
「ありがとうございます。」
撮れたのは寄り添ってと言われて固い顔をした紗良といつもみたいな俺。
2枚撮ってくれて、もう1枚は紗良に俺が笑いかけていて、紗良はさっきのよりリラックスした顔をしていた。
紗良には最初だけのを見せると「わー。変な顔してる!だって寄り添ってとか変なこと言うんだもん!」と騒いでいる。
2枚目は見せられない。
だって俺の気持ちが漏れて丸わかりで……。
「紗良にも癒しアザラシと今の写真を送るよ。
アドレス………。」
携帯を見せ合ってアドレス交換をしていると電話が鳴った。
画面には『清水麗華』と出ている。
嫌な予感がして、出たくないけど出なきゃいけないだろう。
「ちょっとごめんね。」
電話に出ると麗華から仕事でトラブルがあったことと、麗華もしばらくしたら出社することが告げられた。
「爽助はいいわよ。報告だけだから。
今日は外せない用事でしょ?」
離れた場所で不安そうな顔をしている紗良を見る。
俺だって………それでも……。
「俺、仕事を放っぽり出して遊んでる奴なんか王子様にはなれないと思うんだよね。」
「そう………。
女心は相変わらず分かってないけど、ま、私は助かるわ。じゃ後でね。」
電話を切ると紗良に告げるのが気が重い。
俺だってさすがに分かる。
来たばかりですぐ帰ろうなんて……。
紗良の元に行って重い口を開けた。
「仕事で……トラブルがあったみたいなんだ。」
「仕事で………そうですか。
なら、帰らないと。」
「でも………。」
「何を言ってるんですか。
毎日遅くまで頑張っているの知ってます。
休みの日まで大変ですけど、行った方がいいから電話が来たんですよね?」
すごく有難い申し出。
でも……少しは俺とまだ居たいってポーズだけでもとってよ。
俺だけ……俺だけ楽しみにしてて、俺だけ残念がってるみたいだ。

