「俺はさ、本当に上っ面だけの人間なんだよ。まあ、そこを見抜けずにみんな俺のファンになっちゃうんだけど」

夢乃くんが冗談まじりに言う。


「誰にでもニコニコなんてしなくて、もっと素っ気なくしてもいいんじゃないですか?」

「え?」

「いや、冷たくしろなんて言ってるわけじゃないんですよ!ただ夢乃くん自身も大変そうなので……」


私と偽カップルを演じることでたしかに夢乃くんの周りは落ち着いた。

でも学校にいけば「夢乃くーん」と黄色い声が飛び交うし、彼女ができても夢乃くんは夢乃くんだとファンが減ることもない。

話しかけられれば反応するし、名前を呼べば振り向いてくれる。

そんな優しさが女の子たちの感覚を甘くする。


「俺ね、むかし女の子をひどく傷つけちゃったことがあるんだよね」

すると夢乃くんの表情が変わった。


「……それは元カノさんですか?」

「うん。だからなるべく女の子には優しくしようってその時から決めてて。まあ、それで自分の首をしめちゃった部分はあるんだけど、そのおかげで瑠花とも親密になれたしね」


夢乃くんはそれ以上話を広げることはなく、また上手く交わされてしまった。