……滝にでも打たれてこようか。
いや、こう見えて風邪をひきやすい体質だし、夢乃くんは喜んでお見舞いに来そうだから煩悩を捨てるどころか、さらに風邪も雑念も悪化しそうだ。
そして午後の授業を終えた私は夢乃くんと帰ることになって校舎を出た。
すぐに校門の周りに人だかりができていて、この夢乃くん同様の人気……。いや、狼のようにイラついてるオーラは……。
「よう」
もちろん、それは音弥くんだった。
すぐに夢乃くんは「はあ……」とため息をついてイヤ顔をした。
「なにか用?」
「お前じゃなくて芋女に用があんだよ」
「なに言ってんの、渡すわけないでしょ」
綺麗な顔のふたりがものすごい険悪な状態になっている。なんとかしようと私が「あの……」と言う前に音弥くんが閃いたように口元をゆるませた。
「じゃあ、勝負で決めようぜ」
「勝負?」
そのあと私たちは場所を移動して、着いた先はまたバッティングセンター。
ふたりは他のお客さんが唖然とするぐらい速い球を平気で打ち返して、一番高い位置にある赤い的(まと)のような場所を狙っている。
どうやら勝負というのはホームラン勝負のようだ。
「なんか蚊が止まりそうなほど遅くない?」
バットを持つ夢乃くんが新鮮だけど、それ以上にフルスイングする音が凄すぎて見入ってしまう。
「でも80キロの球さえ打てないヤツもいるぜ」
「だれのこと?小学生?」
……私です!