千夏の震えが治まると、翼は千夏から体を離した。



「ごめんなさい。翼、ごめんね」

「ちーは謝る必要ないよ。俺こそごめん」



翼は千夏の涙を優しく指の腹で拭うと、ベッドから立ち上がった。




「ちー…海行こうか」

「え?今から?」

「うん。地元の人間しか知らない秘密のスポットがあるんだよ」



翼は千夏の手を引くと、そのままホテルから出て海へと向かった。


静かに波を寄せる浜辺の上には、月と星たちの光が暗い夜空を照らしている。



浜辺では花火をしている人達が何人かいた。



「秘密のスポットってどこにあるの?」

「もう少し歩いたとこ」



翼に手を引かれてやって来た場所は、少し高台の静かな場所。



その場所は海と空が一面に広がる見晴らしのいい場所だった。

海風が優しく吹いている。




「…俺さ、隼人と中学から一緒だけど仲良くなったのは高2の時なんだよね」

「え?そうなの?」

「うん。隼人と仲良くなるまでの俺は手もつけられない程荒れてた。毎日のように喧嘩をしたし、煙草や酒もやった」



翼は過去の話をポツリポツリと話し始めた。