さまよう爪

中は真っ赤で派手な生地。

これが気分を上げる。

わたしは普段からフルメイクできるもの全部持ち歩く。

重いが帰りからのデートや泊まり、飲み会に対応できる。

化粧下地、ファンデーション、フェイクパウダー、アイブロウ、アイシャドウ、アイライナーを順に手早く仕上げていく。

アイメイクの仕上げはやっぱりマスカラだ。

マスカラ塗っているとき、鼻の下が伸びるのは何故か。毎回思う。この瞬間がすごいブスだ。

顔の余白を少なくするために必要だが、チークは今はいい。

口紅をひいて終了。

いないかもと思ったが、彼はまだちゃんと、いた。

テーブルに両肘をつき、組んだ掌に顎を乗せて暇そうにしている。

椅子をひいて座ると、

「お待たせしました」

また向かい合う。

「おー、綺麗綺麗」

「いい子で待ってたんだから褒めてよ」と言われ、わたしは思わず彼の頭を撫でた。

「いい子いい子ね」

優しく。

さっきまで自分がそうされていたのと、酔いがまだ回っていたからか。

意外と猫っ毛。

そこで自分のやっていることが実は相当あれなんじゃないかと気づき撫でるのをやめる。