さまよう爪

ひとしきり鼻をかみ終わったのち、かすれ声で自分に「……馬鹿みたい」と呟く。

最近涙腺が、ぶっ壊れてる。

「本当にそう思う?」

きっと私は今すっごく間抜けな顔をしているに違いない。

「泣く自分が馬鹿みたいってと本当にそう思うワケ。自分を否定することになるよ。そんな過去もあったけど、今は素敵だと思える人にも出会い、仕事も頑張っている、元気にしている、それで十分でしょ」

「……素敵な人?」

「俺」

何て、さらりと返ってきたものだから。

「普通自分で言う?」

思わずツッコんでしまう。

「言う言う。まあ、 泣いたほうがいいよ。泣けるうちに、泣きな。無理にこらえるのはダメだよ。涙と共に心の垢が落ちるんだから」

さっき、わたしの頬を伝わっていくつもテーブルに落ちた涙の跡に、視線を落とす。

そこで時折しゃくり上げながら肩を震わせて泣くわたしの頭に、彼の手がポンと乗せられた。

頭の上でポンポンと、軽く弾むように動く。

胸を押し潰すような圧迫感に、息が詰まる。

頭をぎゅうっと絞られているみたいに、こめかみが痛んだ。

心の中で言葉にしてみると悲しくて痛い気持ちが猛烈に押し寄せてきて、太刀打ちできずに涙の中に引きずり込まれる。

嗚咽が喉元を駆け上がり、ダンスフロアでは人が踊ってるし、大音量で鳴る音楽が、わたしの泣き声を消してくれるような気がして、わたしはいよいよ本格的に泣き出してしまった。