美優と貴慶は店内を流すように見ながら歩いていたが、 「…なんかさ、混んでない?」 実のところ美優は人混みが、あまり好きではない。 「実は自分、こういう混み混みしたとこ苦手やねん」 貴慶は言った。 「…取り敢えず出よっか」 「せやね」 二人は再び渋谷の街へ出た。 道玄坂を背に再び渋谷駅の近くまで来たときである。 「ねーねー、そこの黒ギャルちゃん」 明らかにナンパの声がした。