九月になって美優の新学期が始まっても、貴慶はまだ鶴見ベースに戻れずにいた。 「裁判が終わるまで、証拠保全で手をつけられへんのですわ」 と貴慶は頭を抱えていた。 九月いっぱいで契約を更新しなくてはならないが、これでは更新どころではない。 取り敢えずバイク便の仕事は例の寿司屋の大将のCD90のおかげで順調であったが、 「なかなか事務所になりそうな物件がない」 というのもあった。