長い階段を降り終わると、偉罨様の前へと立つ。


向き合いしっかりと見つめると、偉罨様はにこりと笑った。



「ここなら誰にも話を聞かれず話せる。」


陛下や范丞相は高い階段の上だ。


確かに私と偉罨様の会話が聞こえる訳がない。



まさか…その為に?


「まず久しぶりと言おう、冥紗。いや…生姫(ショウキ)。」


肩がビクつく。


その名で呼ばれるのは何年ぶりなのだろうか?


生姫…それは私の聖人名だ。


聖人は本当の名以外に、表立って呼ばれる名前がある。


私の場合は聖人名の生姫であったり七神と呼ばれる。

生姫と呼ばれると、自分が聖人なのだとより思い知らされる。


だから私はその名が嫌いだ。


「腕は鈍っていまいな?剣を交えなければ陛下がおかしく思われる。」


そう言うと、私に向かって剣を振り落とす。


カシャンッ


瞬時に剣を抜くと、交わる音が響く。


「何年ぶりか?見ないうちに大人になった。香りが強くなったと言う事は、もう童女ではなくなったという事…」



カシャン


カシャン


力強く振り落とされる剣。

戸惑いが剣を鈍らせ、止める事しか出来ない。