朝の鐘の音と共に起床し身支度をはじめる。


今日は范丞相と会う事になっているので、それなりに着飾らなくてはならない。


髪を結い上げ、髪飾りを付け、衣裳をまとい、乱れなく身支度を整える。



ちょうど支度を終えるた頃、李燗が部屋にやって来た。



李燗の乱れ一つない髪にたくさんつけられた高価な髪飾りが、歩くたびにシャラシャラと鳴る。


李燗は部屋を見渡すと、私の隣にゆっくりと座った。


「今日は范丞相とお会いになるのでしょ?
髪飾りが地味ではなくて?」



私の髪飾りにそっと触れると言った。


私はゆっくり首を振った。

昭儀として高価な衣裳や髪飾りを頂いたけれど、私には勿体ない。


それに范丞相とは、軍妃将軍として会う訳で、陛下の妃として会う訳ではない。


そこまで着飾る必要はない。


「本当に冥紗は欲がないのね。
でも、いつもいい香りがする。
どんな匂袋を使っているの?」


そう言って私に近づき、手を扇いで匂いを嗅ぐ。


私は匂袋を使っていない。

聖七神だけが持つ、香り。

その香りは時期により、強くもなり弱くもなる。


けれどこれを李燗言えるわけがない。