四面楚歌-悲運の妃-


柳将達と仲が悪いわけでもないが、簍将は他者の感情や言動に流される事がないようだった。

演習の際に何事も婕妤同士で話し合って行動していた柳将達とはくらべ、彼女は彼女自身で考え行動している。


「私の力がいまだ及ばぬことは重々承知しております。
しかし、私も軍妃です。役目を果たしたく思います。」


元は武術など縁のなかった娘だ。

簍将はその及ばぬ力である事をわかっているが故に、たった一歩が進めなかったのかもしれない。


『迷いはないか?』

私を真っ直ぐ見つめる簍将に、問いかける。

あえて覚悟はあるかとは問わない。

あの日柳将達が己の不甲斐なさを感じ、覚悟を決めた。

同じ婕妤である簍将は、柳将達を良く知っている。

覚悟を決めた事によって変わった彼女達を気づき、あの悲惨な状況を聞いた上で申し出たのだろう。

柳将達は実際に身を持って知る事が必要だった。

実際、それが彼女達の成長に繋がった。

自らの意志で進む事が、簍将にとって成長に繋がるであろうというのが武軍妃官の判断だろう。

「迷いはもうありません。」

変わることなく真っ直ぐな瞳で簍将は答えた。


「ほう…この様な者もおったのだな。」

隣で崙矣が小さな声で言った。