四面楚歌-悲運の妃-



妃が増えることで、陛下の寵愛する妃が増えることはさらなる御子誕生にもつながる。

そうなれば喜ばしいことではあるが、私達軍妃からすれば護る対象が増えることを意味するのだ。

それがいかに軍妃達にとって負担になるかと考えると、妃が増えることは好ましくない。

寵妃が増え懐妊に至れば、皇后様だけ狙われることも少なくなる

私や晏惟が今は狙いを向けるその役目を負っているとはいえ、その人数は多ければ多いほどいいと、范丞相は考えているのだろう。

私は何も反論することなく、范丞相は新しい妃について話をすすめた。


選定された新たな妃は5人。

下流貴族出身の徐麗珠(ジョ・レイシュ)、楊娟美(ヨウ・ケンビ)

中流貴族出身の莫威玉(バク・イギョク)

上流貴族出身の長孫梗(チョウソン・キョウ)

4人の名を告げた范丞相は、最後の1人を勿体ぶるように間をあけ告げる。


「…そして最後に、私が前から妃にと思っていた方。上流貴族である琴家より、琴彭児(キン・ボウジ)」


その名には驚かずにはいられなかった。

中流下流の貴族は知らない一族が多いが、さすがに上流ともなれば知っている一族が多い。

5人のうちの1人の長孫梗の長孫家も知っていた。

しかし上流貴族琴家は知っている知っていないの話ではない。

琴の姓は珍しいものではないが、上流貴族の琴家は冥明様の生家しかない。