「鄭雪璃は正式な軍妃将軍ではなく、代理であったのだ。」
代理の軍妃将軍…それは他になる者が現れるまでなのか?
軍妃将軍になるはずの者がいたが、なんらかの理由でなれなかった?
それとも他の理由か…
「なぜ代理であるのかは書かれていなかったが、鄭雪璃は黄粛帝が崩御される少し前に、正式な軍妃将軍になったとかいてあった。大昔のことは曖昧で不確かであるのは当然だ。しかし、後宮軍記という正確な記録があるにもかかわらず、鄭雪璃に関しては不確かなことが多く、故に有名ではないのだ。」
正確な記録があるにもかかわらずという言葉に、あることを思いだされる。
聖人にももちろん初代からの記録がある。
その記録も初代・生姫・聖大神・水聖君の記録が不確かなことが多いのだ。
その他の初代聖人たちの記録は正確に記録されている。
『初代聖人の記録も不確かなことが多い。当時幼い時分であったが気になって、一緒の読んでいた地姫になぜかと聞いた。地姫は[記録に残してはならない疾しいことがあるのだ。]と答えたんだ。』
「なるほど、そうかもしれぬな。歴史書というのは、いつの時代も都合よく書き換えられたりするものだ。しかし、幼い時分ということは、同じように地姫も幼かったのだろ?随分大人びた発言なのだな。聖人というものはみな心も体も、冥紗のように早熟なのか?」
『地姫は武術よりも学問や術の書物ばかりよむような子であった故、特別大人びていたな。』
初代軍妃将軍に関する不確かな事も、不思議な文のことも、[記録に残してはならない疾しい事]という地姫の言葉で私も崙矣も納得してしまい、その後はしばらく地姫の話になった。
故に、初代軍妃将軍の事を追求することなく書庫を後にした。

