四面楚歌-悲運の妃-




「初代軍妃将軍の事は知っているか?」


軍妃候補だったころに読んだ黄粛帝後宮軍記の一巻は、初代軍妃将軍のことはかいていない。

二巻以降に書いてあるのだろうが、読んだことがない。

歴代の軍妃将軍については何人か聞いたことはあるが、ここ近年の軍妃将軍のことばかりだった。


「初代であるから有名でしかるべき方なのだが、なにせ大昔であるしこの方よりも有名な軍妃が何人かいるからな。知らなくともしょうがない。名は鄭雪璃(テイ・セツリ)という。唯一、妃から軍妃になった方だ。」


妃から軍妃に?

身分に関係なく、軍妃になれることを決めたのは黄粛帝である。

故に初代後宮軍も、各地から軍妃候補を宦官が集めただろう。

妃から軍妃になる必要はないはずだ。

黄粛帝が勅命を下したのか、自ら軍妃へと名乗りでたか。

否、後者は考えられない。

貴族の出だろう妃が、自ら申しでることなどありえない。

妃とした華美な衣装を纏い優雅にくらしていたのだ、突然身を盾にする軍妃などになれようか。


「実は鄭雪璃が有名でない理由があるのだ。」

有名でない理由?

先程言っていたことが、有名でない理由ではないのか?