四面楚歌-悲運の妃-



崙矣が見せてきたのは[黄粛帝後宮軍記]だった。

黄粛帝後宮軍記は一から十五巻もあり後宮軍記の中でも多い。

その中でも崙矣が読んでいたのは最後の書かれた十五巻だ。


「初代軍妃将軍が書かれた文なのだが…ここからの文だ。」

崙矣はそう言うと、書物の最後の文を指した。


[後宮軍は陛下の想いそのものである。叶わぬ想いであられたけれど、その想いが生み出した後宮軍は、この先の御世まで息づき宮歌國を守るだろう。私は願う。来世ではどうか、天を昇る龍といえど掴めぬ月を抱けるように。]


一見ただ締めくくりの文にしか思えないが、前半部分と後半部分の繋がりがわからない。

後宮軍が後世まで続き國を守ることになることを願うと、締めくくられているならわかる。

しかしこの文章では、後宮軍には関係性がないとしか思わないことを願っている。

天を昇る龍といえど掴めぬ月?


何のことであろうか?


「妙に引っかかる文だとおもうだろ?」

崙矣に聞かれ頷く。

しかし崙矣がこの文をと、何かあるように言われなければ気にしなかったかもしれないぐらいではある。

気になったとしても、深く考えず流していただろう。

その程度ではあるが、崙矣の言うとおり妙に引っかかる文だ。

繋がりのわからない文であるからだけではなく、私には悲愴にも感じる故に。