私は黄雍帝後宮軍の軍記を手に取った。

守りに徹していることが多い宮歌國だが、黄雍帝は近年の皇帝の中では攻める事にも力を注いだ皇帝だ。

歴代の皇帝達が奪われしまった領土を多く取り戻した。

その黄雍帝の後宮軍は、功績を多く残している。

軍妃の数も多く、後宮を守る部隊と戦場で戦う部隊があるほどだ。

軍記には戦場で戦う部隊を作り、戦のたびに出陣させていたこと、黄雍帝は後宮軍を重要な軍としその在り方に力を注いだのだとある。

黄雍帝は多くの軍妃を寵愛したように、後宮軍をとても大事に思われていた。

軍妃将軍に軍妃達を任せるのではなく、自らが出向き声をかけ指導をしたこが、軍妃達の励みにも慰みにもなった。

黄雍帝後宮軍記にはそのように多くの軍妃達を気遣う黄雍帝の話があった。

軍記の最後に、軍妃将軍の言葉が記されていた。

[私達が妃としてよりも軍妃として幸せであったことは、なによりも陛下と宮歌國のために在れたことである。]


そのたった一文が、私にとって求めるものだった。

軍妃達に、最期の時にそう思って欲しい。

軍妃達にとって、陛下はすべてなのだ。

陛下は私達を気遣ってくださるが、それを知るのは警護をしている私達だけだ。

軍妃達に陛下が軍妃も妃たちと同じく大切に思っていることが伝われば、それだけでも軍妃たちの励みや慰みになるのだ。

この事を陛下にお伝えしてみよう。


「冥紗、これをみてくれ。」

私が笑みを浮かべて軍記を閉じたのと同時に、眉間にしわを寄せた崙矣が言った。