その謝罪の意味は聞かなくとも分かった。

己がどんなに非力であったか、軍妃としてなにもわかっていなかったこと、覚悟が足りなかったこと…

そして何よりも、恐怖に身を震わせたこと…

私が感じたことよりも、もっと多くの思いが詰まっているだろう。


「琴軍妃将軍様と梁天王が脅すように行った言葉は、ただの脅しではなかった。私たちを思ってわからせるために言ってくださったのだと気づきました。そんなこともわからず己が力を驕り、覚悟なぞ少しもしてなかったのです。その結果…私の部隊の軍妃は2人とも死にました。」


2人も軍妃が…柳将は黄麟殿の正面の配置だった。

一番刺客の襲撃人数が多かっただろう。

軍女や近衛もいるとはいえ、誰かを助ける余裕などあるはずもなく、黄麟殿の中に侵入させてはならぬと必死だ。


「私は陛下や姜賢妃をお守りせねばという気持ちではなく、己が身を守ることで必死で、恐怖で周りも見えず軍妃達がどのようの戦い死んでいったのかさえわかりません。気が付けば刺客は退き、地に倒れる軍妃がそこにいたのです。」

涙ながらに話す事は、皇后宮での軍妃たちと同じだ。

祁嗄や尹も、自らの部隊の軍妃がどのように逝ってしまったこともわからないだろう。

恐怖と戦いながらも、刺客と戦っていたのだから。

恐怖に打ち勝ち、軍妃として陛下や妃を守らねばという気持ちで刺客に立ち向かうことは難しいことだ。

ここにいる崙矣や悒雉とて、何度も恐怖と戦い打ち勝ち、今こうしているのだ。