『嫉妬…しているのやもしれぬな。
それは妃としての私なのだろう。』


溜め息と共に口からこぼれた。


言ってはならぬし、認めてはならぬ事であるのに


――心が軽くなった。



感情を表に表す事も、言葉に出す事も、認める事もせぬというのは、こんなにも重くのしかかっていたのか…


しかし私はこれからも、心で葛藤をし続ける。


陛下は[嫉妬はしてくれぬのか?]と言ってくださった事はあった。


けれど陛下にはけして言えぬ想いだ。


私の忠誠心故に私を必要としてくださる事を、崩したくない。


私が軍妃将軍であり続ける為に、そしてなによりも哀れなこの感情を、嫉妬だけで終わらせるために…



『しかし私が妃ではなく軍妃将軍であり続ける事を皆が望み、そして己自身が切望する。』

「それで良いのですよ。
私や威仔が、貴女様にとって吐き出す穴であればいい。
もちろん穴なのですから他言はしません。
それが貴女様が軍妃将軍でいる為であり、妃でもいる為でもあり、私の役目なのです。」



劉内侍は優しい笑みを向け、深々と頭を下げた。


劉内侍の事はまだわからぬ。

これから家令として接するうちに、知る事になるだろう。


しかし、劉内侍が信頼できる者なのだという事は、この数刻だけでも思えた。


私にそう思わせる程の、有能ぶりはたいしたものだ。

後ろに立つ威仔に視線を向けると、嬉しそうに笑っていた。


そなたらの前だけ…

他の者たちの前では、私は軍妃将軍であり続けよう。