四面楚歌-悲運の妃-



逞洟とは聖人の中でも1番歳も近く、良く遊ぶ相手であった。


逞洟の生家の聖人四家である華家は術師が多く、本人は[地]の力を得に気にしていない。


故に[地]の力の存在を忘れる事がある。


私は聖人を感じさせないそんな逞洟の傍が、落ち着くと何度も思っていた。


歳に似合わぬ話し方は幼い頃より変わっていない。



「少し見ぬ間に妾より、女人になったのぉ。
いくら聖人が早熟とはいえど、生姫の成長には瞬きすら追いつかぬ程じゃの。」

笑いながら饒舌に話す逞洟に、私も笑みを返す。


逞洟も私が知るよりも随分と綺麗になった。


逞洟は急に思い出したと呟くと手を叩いた。


「先程の祁曹の話じゃが、妾が術を施しておるゆえ老師共の事は心配はいらぬ。」


得意顔で言ったその顔が、昔と変わってなく、また笑みが零れる。


「おお、そろそろ変わってやらねばな。
琳湶(リンセン)や亞縵(アマン)もおるのじゃ。」


水面がまた揺れる。


今日何度目かになる懐かしい名前に、水面により一層顔を近づける。


二人にも会えるのか?



『琳湶…?亞縵…?』


まだ揺れてはっきり映らない水面に向かい問い掛ける。