四面楚歌-悲運の妃-




『李燗っ!?』


そう叫んで中庭に踏み入ってみたが、声に反応する事もなく、人影もなかった。

李燗がいなかった事に、口から息が漏れる。


ただ静寂だけがあるこの場に留まる意味もない。


李燗の室に行ってみよう。


[ピシャン…]





先程聞こえた水音が再度聞こえ、中庭の小さな池に視線をやった。


[ピシャン…ピシャン…]


…!?


風もないのに不自然に波打ち、水音を奏でだした。


なぜ?


ゆっくりと池に近づき、池を覗く。


先程まで波打っていた水面は、急に波紋を描き出した。


な、何!?



「冥紗…聞こえておるか?」


声…?何処から?


あたりを見回すが人影はない。


「ここだ。私の術を忘れたのか?」


術…!?


…この声はまさか!!


水面を改めて見ると、欝すらと人影が写し出された。


『ぎ、祁曹!?
な、な、何故っ!?』


「ご明答。久しぶりだね、麗しの生姫。」


水面に写る姿は4年ぶりに見る、女人にも劣らぬ妖艶さで微笑む男。


紛れもなく幼い頃より一緒に育った、六神・水聖君(スイショウクン)、清祁曹(セイギソウ)だ。