四面楚歌-悲運の妃-




軍師だからとて、武を究めるのがおかしいと思っているのではない。


軍師として私達と並び歩む道を選ぶと言っていた李燗が、武術の鍛練を始めた事に戸惑いがあるのだ。


いや…戸惑いというよりも、理由が気になる。


いつからなのか…何故なのか…



「お会いになられたらいいのではないですか?
しばらくは私共が護衛ですので、お気になさる事はありません。」


そんな私を察したのか、欺軍妃副将軍は笑顔で促す。

護衛に関してまだやらねばならぬ事はあるが、軍妃の選出が終わるまでは私もなにもする事はないだろう。


『お知らせくださりありがとうございました。
では、また何かありましたら。』


今だ笑顔の欺軍妃副将軍に頭を下げ、室を退出した。

集まった時に真上に在った陽は、あれからずいぶん傾いている。


舞妃ノ宮でのいくつかある修練場を、近い所から除いていく。


他の軍妃達の影は殆どなく、どこを覗いても李燗は見つからない。


室にいるのだろうか?


黄麟ノ宮に戻ろうと、踵反そうとして足を止めた。


今…何か音が…


[ピシャン…]


水の音?


中庭からする微かな水音。

誰かいる?…李燗!?



咄嗟に中庭に向かって走り出した。