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「お久しぶりでございますね、琴軍妃将軍様。」


そう言って歳よりも若く美しい笑顔を向けたのは、前軍妃将軍でこのたび軍妃副将軍に命じられた欺明琳様だ。


皇后宮から帰ってきてから数刻の後、私の室に欺軍妃副将軍は訪れた。


隣には、欺軍妃副将軍と同じ年頃の表情一つくずさない軍妃を伴っている。


その軍妃の独特な雰囲気は、どことなく初めて会った気がしない。


おなじ後宮軍といえど、黄宋帝後宮軍と関わる事は今までなく


私達黄秦帝後宮軍と関わりがあるのは、私達に教えを説いた欺軍妃副将軍以外はいない。


「ああ、こちらの者はお初でございましたね。
この者は私の副官の梁悸伽(リョウキカ)と申します。」


欺軍妃副将軍の言葉と共にその軍妃は、私に黙礼する。


梁…悸伽?


梁…という事は…


初めて会った気がしないはずだ。


この方は崙矣にそっくりだ。


否、顔が似ているのではない。


無表情なところや醸し出す気が、崙矣と同じなのだ。


私の思っている事を察したのか、欺軍妃副将軍が付け足す。


「悸伽は四天王・梁天王の従姉ですよ。」


ああ…やはり。


おなじ血族か。


無表情無口であるのは、元刺客一族であった梁家特有なのだろう。