もう声も発する事なく、息絶えた刺客をしばらく見つめた。


聖人一族を裏切り、天子を裏切った事が許せなかった


しかし、それだけではない


刺客を生きて逃せば、私が生姫だと知られてしまう。


それを避けたかった。


幸いこの場には私と晏惟と梛犀しかいない。


二人には李燗達同様に説明せねば…



『二人と…ッ!?』


振り返り二人に声をかけよとして、言葉を飲んだ。


肩を震わせ、私を怯えた様に見る瞳。


…ッ、、


生聖が手から地にするりと落ちる。


掌には血がが付き、体は返り血で染まっていた。


ああ…これが怖いのだ。


私が誰にも言えぬ、聖人の村を出た本当の理由。


戰が残酷な事が嫌である事が嘘でない。


戰が起これば罪なき人の命が犠牲になる


でも私は…陛下がすべてなのだ。


陛下を妨げるものすべてが、私の敵になる。


私が私でなくなる。


否、これも私なのだ。



それが怖かった。



何よりも私は私自身が怖いのだ。



『う…わぁぁぁぁ!!』


崩れ落ちる様に泣き崩れた。


分かっていた


稜禀公子様が皇帝として即位し、軍妃として陛下をお護りすると決めた時から…

周りが見えなくなる程、狂気に支配される事を…


「冥紗…」