四面楚歌-悲運の妃-



黄麟殿の中に入ると、女官が待っていた。


女官に案内され、室の入口で思わず足を止める。


陛下は机に向かい、上奏文を手にされていた。


もう日も暮れているというのに、ご政務されているのか…


室に入るのを躊躇したが、壁内侍が私を呼びに参ったのだからお邪魔にはならぬだろうと、ゆっくりと室に足を進めた。


足音に気づいた陛下がふいに顔を上げ、視線が私を捕らえる。



「冥紗…。
傷は痛まぬか?」


上奏文を机に置くと、私の方へと歩みよる。


『たいした傷ではございません。
もう痛みもありませんし、お気になさらないでください。』


笑顔で答えると、陛下は安心したように、小さく息をはいた。


私を労る様にそっと背に手を添え、奥の室へと促す。

導かれるままに奥の室へ入り、陛下と隣り合わせに椅子に腰掛けた。


陛下は優しく微笑み、私の両手を包み込む様に握ると、口を開いた。


「早速ですまぬがそなたにいくつか話さねばならん事がある。」


真剣な眼差しを向けられ、思わず唾を飲み込む。


范丞相が言っていた、例の事であろうか…?