四面楚歌-悲運の妃-




私は[生]を司る者だ。


己を犠牲にして他者の命を護るは、魂に刻まれし事。

私が死を怖れてしまえば、この力を有する意味がなくなってしまう。


私のこの力は、自らの…


「琴昭儀様?」


!?


不意に声をかけられ、肩が揺れる。


な…んだ、威仔か…


「もうじき壁内侍がお迎えにこられるそうです。
そろそろお着替えなさいませんと。」



そうだ、陛下の元にいかねば。


范丞相の言葉は気にかかるが、考えていても答えはわからない。


ならば今は考えていても無駄だ。


そう言い聞かせ、黄麟殿に行く為に威仔が用意した衣装に着替える。


外が暗闇に染まった頃、壁内侍が迎えに参り、黄麟殿へと向かう。


通り道である姜賢妃様の室前を、何事もなく通りすぎ胸を撫で下ろす。


朝見た姜賢妃様の顔を思い出し、体が身震いする。

私も一人の女人として、ただの妃であったら、姜賢妃様のお気持ちが分かったであろうか?


否、正直な気持ちでは、分かる気もしなくはない。


ただ、私と姜賢妃様はあまりにも違い過ぎる。


私は…軍妃であるから。



「私はここまででございます。
お近くに控えておりますので、何かありましたらお呼びください。」


壁内侍は頭を下げその場を離れた。