四面楚歌-悲運の妃-



いくら私達軍妃が陛下から寵を得ようが、それは策略の寵。

陛下の優しい言葉も

優しく触れる手も


それがたとえ偽りではなく、真であっても


私達軍妃は、ただの妃としては過ごせない。


寝所で甘く酔う時でさえ、警戒を解くことは出来ない。


軍妃ではなく妃となる事以外、それは逃れられない。


過去には軍妃からただの妃となった者はいる。


けれど、私にはただの妃になる事など出来ない。


妃として生きたいと何度望んで振り払っても、また望みそして振り払う。


聖人として生きていかぬとも、私の力を無い事になど出来ない…。


されど、いずれ宿命の道に正されるまで、何度も迷い最期の刻がくるまで、悔いぬ様に生きたいと…


悲しんでなどもいられない。


何があろうとも、何に迷おうとも、今はすべき道を記されたのだ。


私はその道を平らにして、陛下が安心して歩ける様に進む。


真っすぐ范丞相を見据えると、同じ様に真っすぐな視線とぶつかる。


「分かって頂けて幸です。…最後に一つだけお聞きしてよいですかな?」


気使う事なく物言う范丞相が、改めてそんな事をいうとは思わず目を見開いたが、すぐに[どうぞ]と返した。